【コラム】学年ごとの準備のポイント:2ー3年生

 中学受験を考えるようなご家庭のこの時期の小学生は、とにかく忙しいです。習い事が5つを超える、というようなケースも全く珍しくなく、1日に習い事を掛け持ちする、というようなことも多々です。学校生活にも慣れ、コミュニティもいろいろでき、やりたいこと、やらせたいこともどんどんと出てくる時期です。

 この時期になると、国語や算数という科目において、大体その子の持つ特徴、というのが見えてくる頃です。どっちが好き、とか、計算が速いとか、漢字の学習がとても丁寧、などなど。その中で、何か少しあゆみが遅い、というような分野があると、とても気になる時期でもあります。他の子に比べて九九の覚えが遅い、とか、他の子に比べて漢字がうまく書けない、とか。本を全然読んでくれない、とか、算数は文章題ができない、とか。たくさんの要素の中で、どうしても親御さんは「できていないこと」に目がむきがちです。

 もちろん、できていないことを着実に取り組んでいくことは大事なのですが、この時期に最高なのは、「勉強が楽しめる」ことです。これは、絶対に最高です。勉強できる、できない、ではなくて、この時期の子はまだまだ勉強をた「楽しんでとりくむ」ことができる年齢です。小学生高学年、中高生にもあれば、勉強は義務であり、しなければならないことであることは理解できても、本質的に楽しめる子は、本当に稀です。しかし、この年齢の子は、勉強することそのものを楽しめる、そういう天賦の才の時期です。できることならば、この時期の子供達には、楽しく勉強をしてもらいたいです。

 どうすれば楽しめるか、それは人それぞれに要素は違うのですが、おそらく公約数的な要素は2つあるかな、と思います。

 1つ目は、できていないことを摘み上げるのではなくて、その子ができている些細なことを、ご家庭のみなさんが心底喜び、認めてあげること、これに尽きるでしょう。このときに大事なことは、相対評価はだめよ、ということです。誰と比べてどう、ではなくて、その子が自分比較で、あるいは親御さんの価値観として、認めてあげられることを見つけてあげたら、大いにそれを承認してあげて欲しいです。これは、ニュアンスとして、「褒めて育てよう」ということとは少し違います。

 例えば、昨日まで九九の計算の七の段があまり言えませんでした。しかし、今日しっかり七の段の練習をもう一度したら、しっかりと七の段が言えるようになりました。その小さな変化って、とても大事ですよね!努力をしたら、確実に結果が変わったわけです。ですから、その事実を、「今日しっかり練習したら七の段が言えるようになったね!嬉しいよ!」というように伝えていきたいのです。ここは1つ重要な要素があります。それは、「すごいね!」という評価ではなくて、「嬉しいよ!」という承認の気持ちで伝えて欲しいのです。とても細かいことですし、いつもそんな言葉遣いを意識することなど無理です。でも、このマインドはとても効きます。僕が、私が嬉しい、という気持ちは子供に対して効きます。子供は、多くの子が、自分が何かを実現するのももちろん嬉しいですが、お父さんお母さんが喜んでくれることが、何より嬉しいし、安心するし、モチベーションになるものです。「すごいね!」というのはそのままなのですが、どこかに「親が子供の様子を評価している」という上からのニュアンスがあります。「すごいね」よりもぜひ「嬉しいよ!」を使ってみて欲しいです。

 2つ目は、知識の関連づけをしてあげる、ということでしょう。難しいことを言っているようですが、実はそんなに難しいことではないです。

 例えば、お子様が学校で新しい漢字を習ってきたとします。その感じが、親戚の誰かの名前に使われていたら、それを教えてあげましょう。あるいは、国語の文章で「海がよごれるのはなぜ?」という文章を読んでいたとします。そうしたら、実は、この今お皿を洗っているこの水が、どうやって海につながっていくのか、教えてあげて欲しいのです。そうしたら、その途中がどんなことになっているのか、きっとお子様は興味を持ってくれるでしょう。スーパーでお買い物に行ったら、6本入りのビールを何セット買ったら18本になるか、九九を習った子には聞いてみてください。単位を学習してきたら、家にあるテレビがどういう単位なのか、話してあげてください。

 知識というのは、それ1つで、単独で存在するとき、その価値がほとんどありません。興味の広がりもありません。しかし、実際のところ知識というのは、無数のつながりを持っているわけです。小学校2、3年生と言えども、今習っていることは、社会と無限のつながりを持っているわけです。そのつながりは、何も教科書の中や問題の中にだけあるわけではなくて、テレビの中にも、ゲームの中にも、YouTubeの中にも、出かけた先のどこにもあります。それを見つけて、一緒につながりを、広がりを確認していくだけで、子供には、「新しいことを習い、身に付けることが楽しい」と感じるようになれます。繰り返しますが、このくらいの時期までの子供は、ほとんどがなれます。大人に近づけば近づくほど、その能力は「条件付き」に変わっていきます。

 この時期の理想は、このような取り組みを通じて、お子様が勝手に興味を持って、勝手に何かを一生懸命取り組んでいく、そんな状態です。もちろん、そういう何かがなくても、知識を得ることが楽しい、親御さんに喜んでもらえるのが嬉しい、という気持ちが勉強のエネルギーになっていくことは間違い無いでしょう。

 2、3年生の時期に、スキル的にチェックしておきたいことをいくつかげておきます。

国語

・漢字の練習の時に、書いている漢字や熟語の「意味」がわかっているかを確認しましょう

意味のわからない漢字の練習は、記号の練習と同じです。わからなければ聞くように習慣づけたいです。

・1000語程度の初見の文章が10分以内に読めるかどうか(3年生の終わり頃)

・複文の文章が正しく一文書ける。

→「僕は〇〇をした」というような短文の連続ではなくて、「僕は〇〇をしてから、どこそこに行ったけれど、誰々とは会えなかった」というような複文で文章が書ける、ということです。

算数

・九九の100マス計算が98%以上の正答率で2分以内にできる

→中学受験を目指すならば、2分切りは実現しておきたいです。

・一つの問題に対して5分程度考え続けることができる。

・式や計算過程などが、第3者から見て読み取れる

→別に綺麗である必要はないのですが、謎の文字でないことを求めたいです

 この手の話はあげればキリがありません。ですので、単元とか知識ではなくて、所作に注目して確実にクリアしたいところをあげました。決して簡単な内容ではないと思いますが、その一方で、多くの子がそこまでの努力を要せずとも、着実にクリアすることのできる目標であろうと思います。この辺りがクリアできていると、4年生からの中学受験のカリキュラムも十分にこなす下地がある、と言っていいでしょう。