【読解力を作り出す】2)結果としての入試の長文化

1)読解力を求めるが故に、入試が長文化

近年の共通試験では、国語だけではなく、英語、並びに理科系科目や社会系科目でも、試験問題が長文化しています。

2024年度実施 大学入学共通テスト 国語 文字数を分析 難易度は昨年並みだが、速読解力は必須(速読情報館HPより)

国語について言えば、2019年のセンター試験が23870文字なので、共通試験になり劇的に増えたわけではありません。ただ、いずれにせよ、原稿用紙60枚分を80分で読むわけです読むだけではなくて、問題を解く訳ですね。

さらに、より注目すべきなのは、地歴公民、そして理科のテストにおける文字数です。1万文字を超えるような試験が増えており、こちらは明らかに増加しています。数学でも同様の傾向にあり、問題を解く前に、まず「読んで理解をする」ことが入り口になっています。

次に高校受験の国語の文字数を見てみましょう。

【2024年】公立高校入試・国語文字数第1位は?時間が足りない理由と対策を解説(速読情報館HPより)

東京神奈川埼玉、いわゆる首都圏の高校入試では、実に原稿用紙40枚前後の文字数が課されております。それを50分で取り組まなければなりません。東京都の都立高校試験の国語ならば、読解問題は14問、漢字が10問、さらにこれに、200字の自由作文も含まれております。

特筆すべきなのは、東京都の公立高校の入試においては、理科や社会の問題も長文化が進んでいることです。

  • R7年度 社会 文字数 11630文字(問題文を筆者が独自にカウント)
  • R7年度 理科 文字数 11657文字(同上)

理科社会については、これに加えて、図表がたんまりと使われております。問題数は社会が20題で理科が25題前後。中学生の知識を総動員して取り組んでいくことになります。

さらに、中学受験についてもみてみましょう。

中学受験の国語問題では、本文の総文字数が約7,000字程度が平均とされています。これは、試験時間50分を考慮すると、1分あたり約140字を読むペースが求められる計算です。上記の大学受験、高校受験に比べると、さすがに読む量は少ないですが、小学生高学年では1分間に読む量が400−600文字と言われておりますので、読むだけで、時間の半分くらいは使うことになります。

また、特に難関校では近年、国語の問題の長文化が進んでいます。

  • 開成中:2022年は本文の文字の総数12200字
  • 浅野中:過去のデータでは、1題あたり5,000字を超える超長文が出題され、合計で9,000~10,000字以上となる年もあります
  • 聖光学院中:8,000字を超える長文が頻出
  • 桜蔭中:伝統的に国語が難関とされ、6,000~8,000字程度の文章が出題される

最後にもう1つ。都立中学入試における適性検査の問題についてもカウントしてみたいと思います。

  • 大泉中:R6適性検査 Ⅱ8643文字(筆者カウント)
  • 大泉中:R6 適性検査 Ⅲ 4305文字(筆者カウント)

適性検査の問題は、これに図表がふんだんに使われ、さらにほとんどの問題で、これらの資料からデータを加工したり、整理したり、操作したりしながら、思考し、試行し、そしてその考えの過程を文章でしっかりと記述することが求められます。試験時間はそれぞれ45分しかありません。

つまり、どのカテゴリーのどのような試験であろうと、まず「適切に、かつスピーディーに問題文を読み、そこから必要な情報を取り出す」ことが必須要件として求められているということになります。

それは、とりもなおさず、「時代が、読解力を求めている」から、このような試験になっているわけです。


2)なぜ読解力が求められるのか?

読解力の向上を目指すという方針は、近年の日本の教育の大きな課題でもあり続けております。いくつか、日本の教育の課題というマクロの観点からも見てみたいと思います。

A) 教育方針の変化と読解力重視

近年、日本の教育現場では、単なる知識の暗記ではなく、情報を「理解し、分析し、活用する力」を重視する傾向が強まっています。

文部科学省が推進する学習指導要領の改訂(特に2020年度施行)では、「思考力・判断力・表現力」を育むことが目標とされ、その基盤として読解力が注目されています。

入学試験が長文化するのは、短い文章で単純な正誤を問う形式から、長い文章を読み解き、複数の情報を統合して答える形式へとシフトした結果と言えるでしょう。。

B) グローバル化と複雑な情報処理の必要性

グローバル化が進む中で、日本の学生も国際的な基準に適応する必要性が増しています。

例えば、PISA(国際学力調査)では、長文読解を通じた問題解決能力が評価されており、日本もこの基準に合わせた教育改革を進めています。

入学試験の長文化は、複雑な文脈を読み解き、批判的思考を働かせる力を測るための手段として採用された側面があるでしょう。

読解力は、単語や文法の知識だけでなく、文章全体の意図や背景を把握する能力を含むため、長文問題が増えることでその総合力が試されていると言えます。

C) 大学入試改革と多面的評価

2010年代以降、大学入試改革(特に共通テストの導入)により、各大学の個別試験では、従来のマークシート形式に加え、記述式や多角的な分析を求める問題が増えました。

これに伴い、問題文自体が長くなり、複数の資料やデータを読み解く形式が一般的になっています。

例えば、国語や英語だけでなく、社会科や理科でも、長文の設問を通じて読解力と論理的思考力を評価する傾向が見られます。

これは、受験生が情報を「速く、正確に、深く」読み解く力を求められていることを示しており、長文化はそのための必然的な結果と言えます。

D) 受験生の選抜精度向上

競争率の高い入学試験では、受験生の能力をより細かく区別する必要があります。短文では限られた情報しか扱えず、差がつきにくい一方、長文では読解スピード、集中力、情報処理能力の差が顕著に現れます。

特に難関校では、膨大な文章量を時間内に処理し、正確に解答する能力が求められるため、試験の長文化が進んだと考えられます。

これは、読解力が単なる「読む力」ではなく、「時間管理」や「ストレス耐性」といった総合的な資質と結びついていることを意味します。


ここまで長々と記載をしてきました。これこそ、長文化、です。。。(すいません、わたしの文はまとまりがないだけです)

しかし、伝えたいことはただ1つです。

「あらゆる局面において、改めて高い読解力が求められている」

ということです。

この事実を踏まえながら、次回以降、では読解力を向上させるためには、どのような取り組み方が考えられるのか、考察していきたいと思います。