中学受験の現状を紐解く 4)全部のカリキュラムを満遍なくこなすことに意味はない
全部できることを求めるのではなくて、どこができていて、どこができていないのかを把握することが大事
個別の学校についての対策を立てるのは、最終的には6年生の夏場以降でしょうから、そこまではたしかに網羅的に単元を学習していくべきですが、かと行って、「算数の全部の単元が出来ていないと受験に対応できないのか」と言えば、決してそんなことはないのは明白です。そして、算数という科目の特徴で、数学との違いは「事象ごとに違うメゾットを用いる」ということです。文章題は全て方程式、という数学ではなくて、食塩水の時、仕事の時、流水の時、つるかめ的な扱いの時、それぞれの時の考え方を習得する必要があります。だから大変なわけですが、これまで述べた通り、だから、それを全部できないとまずいのか、と言えば、そんなことは決していないのです。
これまで述べた通り、だから、それを全部できないとまずいのか、と言えば、そんなことは決していないのです。
大事なことは、「どこは出来ていて、どこは出来ていないのか、を明確にしておく」ことです。そうすることで、6年生夏以降の対策の立て方が変わってきます。
全部を綺麗にやりきろうと思えば、算数は、毎週毎週新しいメゾットを習得する必要があり、たしかに膨大な量の演習が必要です。イメージとしては、今週はストレートを打つ練習、それは今週でマスターして、来週はカーブ、再来週はスライダー、4週目はフォークを練習して、さあ、5週目には試合です、という感じですね。それは、絶対的な練習量が必要です。
しかし、実際のところは、5年生でいろんな単元を網羅的に学習した後、6年生の1年間かけて、受験本番に向けて復習をしながら定着を図っていく、そう言うカリキュラムになっているわけです。
ですから、今週習ったことが完璧に今週できるようになる、その連続を求めることよりも、限られた学習時間の中で「しっかりと習得できた」単元は、その子にとって得意な単元になりうる単元であり、かつ、その子の中に特徴的な傾向を紐解いていくためのポイントになる単元です。非常に重要な情報になります。ですから、そのことを、大いに認めて、承認してあげてほしいです。
一方で、できなかった単元も出てくる。食塩水はどうしてもやりにくい、ということもあるかもしれません。それならそれで、たくさんある単元、メゾットの高々1つ、思い切って「できない単元」として認めてあげましょう。また、「出来ない」といっても、どういうレベルであるのか。食塩水ならば、天秤図を使う考え方は出来ないけれども、その手前までならばできる、というならば、それは結構出来ている、といっていいでしょう。そもそも、食塩、水、こさの関係がわかっていないならば、そこは、なんとか分からせてあげたいところですが、もし、そこがわかっていないのだ、と認識できれば、そのレベルを理解させることはそんなに難しくないはずです。
今、全部できなくていい。出来ないことを認めてあげる
思い切って、現段階でできないことを認めてあげましょう。もしかしたら、その単元は彼彼女の脳の特徴的にやりにくいタイプかもしれません、そうならば、それを無理やりやらせようとするのは、非常に辛い作業ですよね。何度も言う通り、高々一つの単元です。もしかしたら、その単元は、受験する学校で出題されないかもしれません。されたとしても、1問、5点かもしれません。それならば、得意な国語で得点を重ねられるように努力した方がいい 、かもしれません。
また、5年生の現段階では理解が厳しくとも、6年生の12月とかになると、急に理解が進んだりします。特に、早生まれの子はそう言うことが往々にしてありますので、子供の成長とともに理解する力も変わってくる、と言う可能性についても考慮する必要があります。
算数は、今、全部できなくていいです。そう決めれば、算数にかける時間は、劇的に変わってきます。このように各科目を見ていくと、網羅性を求めるあまり、カリキュラム過多になっている、と言うのが現状の中学受験のカリキュラムと言っていいでしょう。