プラトー効果を知っていますか?

受験勉強を進めていくと、「これだけ頑張っているのに、なかなか成果が出ない」という時期に必ず直面します。その場面がいつか、というのは人それぞれです。4年生に入ってすぐ、という子もいれば、6年生の夏前になって感じる、ということもあります。偏差値40ぐらいでそう感じることもあれば、60まではサクッときたけど、なかなかそこからは伸びていかない、ということもあるでしょう。

1つ事例を見てみたいと思います。

4年生の2月、受験学年で言えば5年生のスタートから受験勉強をスタートしたK君。もともと4年生までの学校の成績は抜群で、公文に長らく通っていて計算は正確で、読書も大好きで安定したメンタルを持っているように見える子でした。

スタートしてみると、国語なナチュラルに読解力が強く、当初から高い成果を出していました。組み分けテストをしても偏差値60前後を常に維持しています。漢字もしっかり取り組んでいます。理科と社会も安定して取り組んでいましたが、算数だけは5年のスタートから偏差値は40を超える程度になっていました。

算数は、4年生の内容を取り組んでないと、5年生の内容はキャッチアップできないので、親子で5年の内容を授業で取り組みながら、4年生のテキストを毎週2、3単元程度詰め込んで頑張っていました。初めはそういう状況なので、ある程度算数はできなくても当然、と思っていて、夏を越えたくらいまでに追いつければ、という感じでした。

ところが、毎週算数だけでも、塾の授業とご家庭でのレクチャーと合わせて10時間くらいは頑張ってやってきたのですが、なかなか成果としては上がりませんでした。毎週10時間以上算数、ですので、5年の初めとしてはしんどいです。当然に子供にとってはものすごい負担感があります。やらされ感が。特に、これまでは勉強で苦労というものは特にしてこなかったタイプですので、劣等感も合わせて、夏を終えたところの組み分けテストで、過去最低の偏差値が出て、「もう無理」となりました。

珍しいケースではなくて、この「半年間、成果が出なくとも我慢してきたけど、もう我慢の限界」という事態は、その期間の長さに多寡はあれども、ほとんどの人が経験するケースではないかと思います。

ではどう考えるか。

ここで1つ、原理原則としての考え方を提示したいと思います。プラトー効果、と言われているもので、学習だけではなくて、スポーツなどの他の習い事にも言えることです。

<プラトー効果>

上の図は一般的にプラトー効果といわれるもので、横軸に「かけた時間・労力」を取り、縦軸にその「成果」をとっていきます。そうすると、理想としては、かけた時間に比例して、成果が出る、勉強ならば点数や偏差値が上がっていく、ということが望ましいわけですが、実際はそうはなりません。

注意点①というところを見てもらいたいのですが、取り組み始めて少しは成果がパッと出やすいのですが、そこからしばらく、時間をかけても、成果は横ばい、という時期が続きます。ここが平原部分と呼ばれる時期で、勉強をしていると、「やってもやっても成果が出ない」と感じる時期です。

ここが、先ほどの事例でいうところの、「6ヶ月間算数を頑張っていた時期」になります。

ここで大事な視点は、では、「今はプラトーの平原部分の時期で、もうすぐ、この後のブレイクポイント(急成長する)がやってくる」のではないか、ということです。そう判断するならば、苦しくとも絶対にやめてはいけないし、諦めてはいけないです。

プラトーの平原部分は、その長さがどれくらいなのか、いつ、ブレイクポイントがやってきて急成長するのか、それを測ることができません。できないのだけれども、成長はこのような曲線をたどるものだ、ということをまず認識しないと、平原部分こそが、成長するためのエネルギーを溜めている部分なわけで、ここがなければ成長しないわけです。

ですから、この原理を認識せずに、ちょっと成長しないから、と言ってすぐに「適性がない」みたいな判断をすれば、いつまでたっても成長はしないわけです。

でも、現実問題として、この平原部分は苦しいし、そこに身を置いていると、本当に次の急激な成長期がくる、とはどうしても思えないです。理屈としてこうだ、と言われても、そうは思えない、というのが多くの実感です。

しかし、ここは声を大にして言いたいのですが、「自分の子供を信じる」ことが教育の最大の要諦です。平原部分の苦しい時期こそ、親御さんの力、励まし、支えが重要なわけです。

この時期の子供はしんどいです。逃げ出そうとするし、サボるし。だって、成果が出なくて一番苦しいいのは、そうは見せなくとも子供だからです。だから、この時期こそ、親御さんが支える、メンタル的に、最大の時期です。受験勉強を支える、ということは、親御さんにとっては、この時期を支える、ということと同義です。

もちろん、勉強の進め方、取り組み方、環境が好ましいものであるか、その点検は必要です。場合によっては環境を変えたり、方向性を変えたりすることは必要でしょう。しかし、ベースにあるのは、「自分の子供の成長を信じる」ことです。

別の事例を見てみましょう。

Bくんは4年生後半から大手塾で受験勉強をスタート。癖のある子で、虫が大好きで、理科だけやっていれば天才的で、理科関係の読み物も大好きですが、好きでもない教科についてはなかなか手がつきにくく、大手の宿題量には全くついていけず、個別塾へ。

それでも国語や社会などは、漢字もさしてやらないし、覚えることは全く興味がないので、偏差値的には30台、という状況が続きました。理科だけは偏差値は60近いことがあり、算数もセンスはあるけれども、宿題をあまりやらないので、やり方身につかないまま、でした。

そんな状況が6年の夏まで続き、もうダメだ、もうやめよう、と思ったのが6年の9月。

本人と話をしてみると、本人は「受験をやめたくない」と。ならばちゃんとやることやってほしいのに、そこは変わらない、というやりとりを1年以上やってきて、「もうそんな話は聞けない」と心の中では思ったそうですが、本人の言葉をもう一度信じて続けることに。

10月に、とある学校の文化祭に友達につれられて(彼のその時の偏差値では15以上の差があったので、彼は考えてもいなかった)行ったのですが、そこの学校の生物部に惚れてしまい、帰ってくるなり、「絶対あそこに行きたい」と言いだし、その場で宿題をやり始めました。

そこから、一気に話は変わりました。言わずとも勉強はするし、塾で自習はするし、止めなければ土日もずっと勉強をしだします。聞けば「学校の先輩に、必ず行きます、と約束した」そうです。生物部の。

9月に42だった四谷の判定テストの偏差値は11月が52、12月で57にまでなりました。目指した学校の80%偏差値は59でしたからまだ足りませんが、12、1月の過去問演習では、完全に凌駕した結果を残し、そのまま1回目の試験で合格をしました。

あっという間、でした。伸びるのは。伸びるまでは、永遠のような長さ、でした。

でも、子供の成長はそういうものです。

勉強だろうが、スポーツだろうが、他の習い事でもここは同じだと思います。平原部分の苦しさに耐え、頑張り、結果としてブレイクポイントを迎え、急激に伸びていく。

これこそが「成功体験」でしょう。

受験に成功するかどうか、ではないと思います。

受験勉強で最も大事なのは、この急激な成長を体験できるかどうか、です。

これが体験できれば、自分にも、そして親御さんにも自信がつきます。ありきたりな言葉ですが、努力を継続すれば、必ず変われる、という。

自信がつくのは受験の結果、ではないのです。苦しい過程を経て、「成長した、自分が変わった、という実感」が自分に自信をもたらします。

子供はこのことを自覚はできません。だから、受験に臨むご家庭、関係者は必ずこのことをしっかり自覚して、子供を支えていく事が大事です。