暗記にかける時間はできるだけ短くしよう!

★暗記ができない子=「ダメな子」というレッテル貼りは間違っている

世界はITによりどんどんとその進化のスピードを高めており、これからの未来を担う子供たちに求められてくる素養も、大きく変わって来ようとしています。2020年度の大学入試からは、暗記・知識偏重型から、主体性・知識技能・思考力判断力表現力の3つの要素を試す試験になっていこうとしています。

ですから、それに合わせて、中学受験の試験内容も例えば公立の一貫校などに見るように、知識に頼らないスタイルへと徐々に変容していくでしょう。

その一方で、現状の試験を突破するにあたり、暗記が大きな武器であり、知識が大きく物を言うのはまだまだ間違いないところであって、暗記が苦手だ、と言う子にとっては、そこをいかにクリアするかが大きな課題になっていくのは間違いないところでしょう。

暗記について言えば、中高生にもなれば、あまり個人による発達の差というのを鑑みる必要はないと思うのですが、小学生のうちは脳の発達の影響もありますし、そもそも個人差も大きくあります。特にワーキングメモリーの発達状況によっては、中学年くらいだと、「さっきやったことも覚えていないの??」みたいなことは往々にあります。でも、だからといって、そう言う子が、その先もずっとそうなのかと言えば、そんなことは全くなくて、高学年になり中学生になっていく中において、自然と解消していくことが概ね一般的です。(例外的に障害であることもあります)

ですから、暗記ができれば、中学受験のかなりの部分が楽になるわけですが、ではだからといって、小学4、5年の頃あたりに、暗記が苦手な子、暗記が向き合いにくい子に、そこに多大な負荷とプレッシャーをかけるのが良策かどうかというのは大いに疑問があります。上記のように、発達過程の問題もありますし、だいたい、世の中全体の流れが知識・暗記偏重から変わろうとしている時代に、暗記が苦手だから勉強ができない、といようなレッテルの押し方は、間違っている、と断言していいでしょう。暗記が得意不得意は、勉強においての1要素であって、これからの学習には、暗記していることよりも、素早く検索する力の方が断然大事でしょう。

そう考えると、とにかく、中学受験だからといって、たしかに「覚えて来よう」ということを盛んに毎回言うのですが、それを覚えられないからといって、その子が「勉強のできないやつだ」「頭が悪い」というようなレッテル貼りだけはしないように、そんなレッテルを貼るぐらいならば、中学受験などすぐにやめた方がいい、と思います。ちょこっと暗記ができるらといって、人生においてはそんな力は受験以外なんの役にも立ちません。

とはいえ、ですね。そうはいっても、暗記がしっかりできた方が得なわけですから、ではどのようの暗記に向かいって行けばいいか、というところを見ていきたいと思います。

★とにかく書け、が暗記ではない

イメージして欲しいのですが、今目の前に理科の用語が30個並んでいます。これをこれから10分で覚えましょう、という時にどうするでしょうか?

どうしても、私たち大人は「書け」とにかく「書け」といいがちです。しかし、頭に知識を定着させる、という取り組みは、別にそんなに単純なことではないです。これは、実際に、とある教室で見た様子ですが、4つくらいのケースがありました。

1)じっと見ている

実は一番多かったのは、圧倒的にこれですね。

2)30個を順番に書いていく

次に多かったのがこの形です。前から順番に20個書いて、それを繰り返す、という形です。

3)口に出して覚えようとする

手は動かさず、前から順番に口に出す、というところです。これも小学生は多かったです。

実は、ここまでで、やっている子のほぼ全員でした。結果は、ほとんどの子が20個未満で、少しの子が20個を超えた、手法による差はさほど見られませんでした。

ところが、一人だけ10分で30個中28個覚えた子がいて、その子がやっていたのが、

4)3個セットにまとめて書いて覚えていく

ということでした。書いて覚えようとしているのではなくて、自分なりに3つごとのグループにわけていき、そのグループごとに覚えようとしていました。単なる羅列に対して、意味を持たせて書いていった、というところですね。

このように、暗記の仕方、というのは「とにかくたくさん書けばいい」というような、単純なものではありません。

このような超短期暗記ではなくて、一般的な暗記になれば、方法はもっと色々見いだすことができます。

1)スマホやパソコンを使う

2)貼り紙をベタベタと貼る

3)自分なりのルールに並び替えをする

4)暗記作業をする場所を変えてみる

5)暗記する最小単位を決める

などなどです。詳述はここでは避けますが、大事なことは「どういうやり方がその子にとって最適であるかは、やってみないとわからない」ということです。

それなのに、押切文句のように「暗記なんだから、いいからたくさん書け。かいておぼえなさい」というのは、押し付けであり、実に非効率なことを押し付けている可能性が高い、ということです。

その中でも小学生が当たりがちな暗記トラブルのうち特に大きなものを1つ事例として見て見たいと思います。それは、「漢字で覚えられない」というものですね。

★漢字には拘らない★

K子さんは5年生で、しっかりした子で、宿題もきちんとやるし、時間をかけて暗記課題にも取り組んでくれます。しかし、漢字で覚えることが苦手で、特に社会の用語を漢字で覚えきることが一つのネックになっていました。「桓武天皇」が「かんぶ天皇」だし、「しょうとく大使」だったりするわけです。ちゃんと覚えようとしているし、漢字そのものもが苦手、ということでもないので、何か原因があるのだと思うのですが、それにしてもちょっと目立つ、というところです。

それで、塾の先生からも「漢字で書けるようにならないと、覚えたとは言えない」ということで、平仮名になってしまった用語については、残って漢字で書く練習を毎回させていたのですが、だんだんとそれにより、逆に社会が嫌いになってしまい、四谷の偏差値で60あった社会の偏差値が、みるみるうちに40台半ばになり、あっという間に受験リタイア、となってしまいました。

それまでも、漢字で大して書けていなくとも、偏差値60は超えていたのです。もっと、ということで漢字に拘らせた結果、うまく取り込めず、社会の授業に行くのが怖くなり、全体的に勉強が進まなくなった、ということです。

もちろん、人の名前、出来事、用語、当然に漢字出かけることが望ましいです。でも、だからといって、じゃあ、漢字出かけることが、どれほどプライオリティが高いのか、と言えば、別にそんなに高くはないです。書けるのはベターであるけれど、書けないと(もちろん程度、はありますが)それがものすごい致命的なことか、と言えば、そんなことはないです。テストの点数的に言えば、社会の用語が漢字で書けなくて落とす点数は、きっと数点、です。

漢字の学習、漢字での暗記については、繰り返しですが、できてしかるべきです。しかし、得意不得意のあることです。練習はしていくとしても、そこに完璧を期す、完全を期すことは、得意な子はともれとして、不得意な子にとっては業苦の所業です。それを思うだけで嫌になる、場合によってはそれで怒られると思うと、それだけで震えてくる、くらいの子もいます。

ですので、漢字で書けること、漢字が書けることは、ベター案件と思い、そこにこだわりすぎない、読めるならばいいや、ぐらいの気楽さも必要です。

★暗記はちょっとした変化ですぐに結果が出る★

ところで、暗記というと、一般的には暗い辛いイメージが強いのですが、実はそこがパラダイムシフトの必要なところだと思います。

ちょっとイメージをして見ましょう。毎回、漢字のテストが20題ある授業があります。国語ですね。Kくんはそのテストが嫌で嫌で、毎回半分も取れません。その結果は集計されて、塾の入り口に毎週張り出されていて、いつも最下位の方です。親御さんもそれを見て、いつも口うるさく「漢字をやりなさい」と言ってきます。

でも、Kくんとしては、100回書いたって、テストでは間違う、そうです。

でも、ちょっとしたアドバイスがあって、読みはとってもよくできるので、じゃあ、「対象の漢字について、読みだけやろう」ということにしました。読みについては、単に読むのではなくて、例文で読んでもらいました。例文については、それぞれ10回ずつ読んでもらい、前日に20個の熟語を2回だけ書いてもらい、テストの前にもう一度見返しもらいました。

すると、あっという間に次のテストの20問テストが、15問までできました。書く量はいつもの半分どころか5分の1もありません。

大事なことは、それによって、親御さんも先生もKくんを大いに褒めてあげられる、ということです。そうなんです、暗記もの、というのは、ちょっとそのやり方を変えてみることで、わりと変化がパッと出て、それがいい方向性のものならば、その努力を大いに褒めてあげることができるものなのです。

つまり、暗記ものは、子供を褒めてあげられるチャンス、なんです。上記のように、20問テストの結果がちょっと変化した、というのは、小さな小さな変化かもしれないけれど、自分がやり方を変えた、それによって結果が変わった、という、実はとってもとっても大きなプロセス改善、な訳で、大変お大きな成果です。それにより、周りも褒めてくれて、自分もちょっとした自信になります。

現に、このKくんにおいては、彼がいうには、「今までは漢字を記号とか図形だと思っていたのが、文の中で覚えると、言葉になった」と言っており、意味や用法が明確になることで、頭に入りやすくなったそうです。

その結果、この後はさらに進化して「2回書いて書けない漢字だけ頑張って練習すれば満点になる」という取り組みをするようになりました。要は、自分の中に入りやすいものはたくさん練習する必要はなく、入りにくいものだけ繰り返せばいい、ということですね。

ここまで来ると、もう立派な業務改善、ですよね。暗記モノへの取り組みというのは、言葉悪いですが、頭の良し悪しが結果に関係しないので、冷静に改善改善に努めれば、結果の出やすいテーマと言えるでしょう。

★忘却曲線はフル活用すべし★

こうして覚えた内容ですが、あるいは、授業で聞いてふむふむと思ったことですが、そのままにしておけば、次第にその記憶は薄れていきます。この「忘れ方」には、人間の脳には傾向があり、その傾向は一般的に「忘却曲線」として広く認識されております。

あまりにも一般的に知られているので、今更忘却曲線か、というところですが、やはりこれをきちんと踏まえて復習することがもっとも理にかなっていることは、今でも沢山の学習ノウハウ書に出てくることを見ても明らかです。

(とび職から米名門大へヤンキー式勉強法)

どういう内容かといえば、人間はある事象を覚えてから、

20 分後:42 %忘れる

1 時間後:56 %忘れる

1 日後:72 %忘れる

1 週間後:77 %忘れる

1 ヶ月後:79 %忘れる

という傾向があるそうです。

これを見て、やはり一番大きい差だなと思うのは、「1日で72%忘れる」けど、「1ヶ月でも79%にしかなっていない」ということです。つまり、この「1日で忘れる72%」を減らすことができれば、効果的な記憶の定着が図れるだろう、ということです。

だから、暗記したいものは、覚えたその日のうちにもう一度確認しましょう。授業の内容は、その日のうちに、ノートをもう一度見返しておこう、ということです。

これは、例えば暗記ものならば、ただ「見返す」だけでいいでしょう。授業内容ならば、ノートを「みる」だけでも断然違います。もちろんもっと積極的な取り組みをしてもいいですが、継続することを大事だと思えば、小さなワークでいいので、継続して取り組めることがとても大事です。

★暗記にかける時間は極小化すべき★

これまで見てきたことを総括すると、この章でお伝えすべきことは1つです。

中学受験において、暗記はまだまだ大事だが、そこにかける時間は、できるだけ短くすることを決意すべきだ、ということです。

暗記が苦手なら苦手でいいです。工夫をするけれど、時間量を無為に投下しない、ということです。ここを逆にして、「とにかく書け、できるまで書け」を貫くと、業苦を親子で味わうことになります。それは絶対に避けるべきでしょう。